いま企業が「ブランディング」に投資をする理由
「人が採れない」という話は、もう聞き飽きたかもしれません。
ただ、2025年のデータを見ていて、少し風向きが変わったなと感じたことがあります。
「採れない」の先で、「辞められて、会社が続けられなくなる」ケースが目立ち始めているのです。
人手不足倒産、3年連続で過去最多
帝国データバンクの調査によると、2025年の人手不足倒産は427件。
年間で初めて400件を超え、3年連続で過去最多を更新しました。
注目したいのはその中身です。
従業員や経営幹部の退職が引き金になった「従業員退職型」の倒産が、年度ベースで初めて100件を超えました。求人を出しても来ない、ではなく、いま働いている人が辞めていくことで事業が回らなくなる。そういう倒産が増えています。
一方で、企業側も手を打っていないわけではありません。2025年の春闘では賃上げ率が平均5.52%と、2年連続で5%を超えました。
ただ、この賃上げ競争には構造的な問題があります。
原資のある大手は上げ続けられる。中小は追随しきれない。
実際、賃上げに耐えられない「賃上げ疲れ」を要因とする倒産も増えているという分析があります。
つまり、「給与だけで人を惹きつけ、つなぎとめる戦い方は、多くの企業にとってすでに分が悪い」ということです。
広告業界のトップランナーたちは、何を見ているか
では、給与以外の何で選ばれるのか。
このテーマについて、今年1月に公開されたGO代表・三浦崇宏さんの「2026年広告業界大予測」(NewsPicks)が示唆的でした。

三浦さんは、人口減少社会でブランディングの重要性が増すという昨年の予測が的中したと振り返ったうえで、その理由をこう整理しています。
各社がAIでマーケティングを最適化していくと、訴求内容もターゲットも似通っていく。差がつかなくなった先に待っているのは、広告費を多く積んだ側が勝つだけの消耗戦。
だからこそ、その企業を選ぶ理由としての「らしさ」や「愛着」をつくるブランディングが不可欠になる——という論理です。
これは商品を選ぶ話であると同時に、働く場所を選ぶ話でもあります。
実際、同記事では採用難を背景に「採用ブランディング」の価値が上がっていることに触れられており、GOが手がける企業パーパスの開発・浸透プログラムは年間1億円からという価格ながら、多くの申し込みがあったそうです。
大手企業はすでに、この領域に予算を動かし始めている。それが2026年の現在地だと思います。
「AIを使う」から「AIで変える」へ、そして残るもの
もうひとつ、同じ記事で引用されていた言葉が印象に残っています。AI活用支援で急成長するナレッジワークの麻野耕司さんによる、「2025年はAIを使う時代、2026年はAIで変える時代になる」という趣旨の指摘です。
「変革に最も大切なものが後回しにされている」
— 麻野耕司 |ナレッジワーク (@asanokoji) January 17, 2026
ナレッジワークのセールスAXソリューションに込めた想いを書きました。https://t.co/D9JIpMqcX5
分析やリサーチ、資料作成といった「賢い仕事」は、これからますますAIが担っていきます。
逆に言えば、AIに任せられない領域——人の感情が動く瞬間をつくること、組織に想いを浸透させること——の相対的な価値は上がっていく。
三浦さんの記事にも、AIによる偽情報が氾濫する中で、対面のコミュニケーションや人が集まる場づくりの価値が改めて評価される、という予測がありました。
僕自身、イベントの現場に長くいる人間として、この流れは肌感覚としても納得できます。
パーパスは「つくる」より「浸透させる」ほうが難しい
ここからは、現場側の実感を少しだけ。
企業ブランディング、とくに採用や社員定着を目的としたブランディングには、大きく2つのフェーズがあります。
ひとつは、自社の存在意義や「らしさ」を言語化するフェーズ。
もうひとつは、それを社員や候補者の体験に変えて浸透させるフェーズです。
そして、つまずくのはたいてい後者です。
立派なパーパスやビジョンを策定しても、社員がそれを「自分ごと」として感じる機会がなければ、日々の業務の中で忘れられていきます。
候補者から見ても、Webサイトに書かれた言葉と、実際に触れた社員の熱量が一致していなければ、むしろ不信感につながる。
言葉を体験に変える装置が、キックオフや周年イベントであり、社内向けのブランディング映像です。
手前味噌になりますが、僕が代表を務めるWORLD DRAFT Inc.のチームメンバーは、グローバルトップクラスの化粧品ブランドの社内向けブランディング映像の制作や入社式・内定式などのイベントにも携わった経験があります。
社名は控えますが、世界的なブランドだからこそ——「社員に自社の価値を改めて伝える」ことに、きちんと投資をしている。
その現場を直接見てきました。
外に向けた広告には熱心でも、中で働く人に向けた発信には予算をかけてこなかった、という企業は少なくないと思います。特にAI時代が加速すれば社員同士のコミュニケーションはより希薄化する一面もあるかもしれません。
ですが、退職が倒産に直結する時代においては、社内に向けたブランディングやチームビルディングの徹底こそが、実は最も費用対効果の高い投資になりうる、と可能性を感じています。
まとめ
整理すると、こういう話です。
- 人が辞めることが、事業リスクに直結する時代になった
- 賃上げ競争は、体力勝負であり多くの企業には持続可能ではない
- だから「この会社で働く理由」をつくるブランディングに、予算が集まり始めている
- そしてブランディングは、言語化だけでなく、イベントや映像といった「体験」に落とし込んで初めて機能する
年間1億円のプログラムは組めなくても、期初のキックオフや入社式等を「ただの決起会」から「会社の想いを伝える場」に設計し直すこと、創業の物語を1本の映像にまとめて採用や社内で使い回すこと。
そのくらいの規模から始められることは、実はたくさんあります。
弊社は、イベント制作と映像制作を軸に、企業の「想いを体験に変える」お手伝いをしています。
自社のブランディング、何から手をつければいいか——そんな段階のご相談でも構いません。
お気軽にお問い合わせください。